あるジョブホッパーの軌跡

7転8起の人生

5社目② 40代後半

 1年ぶりの転職活動だ。早速、前回と同じく、既知のエージェントに声をかけるとともに、名だたる転職サイトにも、すべて、再登録し、良い案件があれば、ダメ元でも、申し込むという動きをとった。特に、今回の会社を紹介してくれた個人エージェントは、問題会社を紹介した責任を感じたのか、熱心に、案件を紹介してくれた。年齢、転職回数、1年での離職など、条件は、前回より格段に悪くなっているはずだったが、なんとなく、うまくいく気がしていた。1年前よりは、格段に、案件が多く、質が良い。ワンマンオフィスにいるために、転職活動もしやすいのは、有難かった。メールのチェックやエージェントとの電話が事務所で堂々とでき、面接日程も、自由に組める。前職にて、グループウェアに面接先を書いていたふざけた男も、その頃、会社で追い込まれていたようで、転職活動を始めていた。このような転職仲間がいるのは、精神衛生上、本当に、有難かった。会社がいよいよ事業撤退へ追い込まれる中、何社か面接を受け、落ちる中、諦めることなく、再度、既知のエージェントに、支援依頼のメールを打つ。
 直ぐに、あるエージェントから、案件の紹介があった。エージェントからの案件の紹介は、本当に嬉しいものだ。新しい出会いにドキドキするし、面接に至る確率も高い。見れば、関西本社のメーカだ。昔からよく知ってる会社で、こんな会社には、もう2度とは戻れないと思っていた会社である。1点、不安があるとすれば、未知の商材の事業企画職の採用であり、経験が活かせるかと懸念したが、ダメ元で、応募した。転職は、うまく行く時は、何事も速い。直ぐに、面接の案内が来た。取締役を中心に、3名の面接官との一次面談である。入りたい気持ちが強いためか、面接プレゼンも調子よく、特に、成功する時はいつものことながら、取締役との相性も良いようで、一次面接を突破した。事業企画職なので、会社の想定される問題点とその課題、解決策をセットで、提案、私なら解決できると思わせば、良いのだ。前回苦しんだ転職理由も、今回は、”事業撤退のため”と一言で片づけられた。その後、二次面接は、社長面接であったが、取締役のフォローもあり、無事、終了した。最後に、社長から、「塞翁さんは、何歳までこの会社にいるつもりか?」と聞かれた時は、即座に、「定年までです」と、当然のごとくに、応えておいた。エージェントからの内々定電話は、九州でのトラブル処理時に受け、感慨深かった。年収も、維持でき、本当に、ここで、定年まで、腰を落ち着けようと思ったものだ。
 東京本社に出張する機会があり、その時に、会社が、近々に買収されることを知った。同日に、エージェントから、内定電話がくる。すぐに、社長に、辞める旨を伝える。まさに、間一髪の転職であった。ちなみに、新会社に移った人は、その後、1人を残して、皆、首になる。
 今まで扱ったことのない商材、しかも事業企画、ということで、多少不安はあったが、会社側も、そんなことは、ご存知の中での採用であろうとたかを括る。結果的に、この会社にいる間、商材は、最後まで、よくわからなかったが、その後の事を考えると、これも良い経験となり、後々活きることになった。この転職は、私の転職歴の中で、唯一、エージェントがいたから実現できた案件である。エージェントが、私の事を理解し、転職先のこともよく知るからこそ、マッチングできた事例である。