あるジョブホッパーの軌跡

7転8起の人生

2社目① 20代後半

 転職初日は緊張した。この時は、仕事の実績もなく、自信もないため、不安感で一杯だった。上司との対面、同僚になる人たちへの紹介。一連の行事が流れるが、終始、緊張感で満たされていた記憶がある。仕事は、特に決まったものがあるわけではなく、しばらくは、新しいプログラム言語の習得や上司との客先同行という感じだった。その日、上司の計らいで、近くの居酒屋で有志だけの小さい飲み会が設定された。ほぼ同年代の人間が集まったが、皆、既に仕事に馴染み、各々自信を持っており、気おくれを感じたものだ。唯一、同じ日に転職してきた40歳になるMさんとの昼飯だけが、癒しの時間であった。当時は、40歳にもなって、子供2人もいて、転 職するってなぜなんだろう?と、疑問に思ったものだ。1週間もしないうちに、Mさんが、
この会社はダメだ。ということを言い出した。前職では、20人もの部下を持ち、大型のシステムを開発するバリバリの管理職だったらしいが、この会社では、開発ではなく、SE営業としての動きが強く求められており、不満だったようだ。また、隣席に、私より3カ月程前に転職してきた5歳年長のKさんがいた。この人は、”地元に帰るために、ここに転職してきた。半年ほど修行した後、営業本部でSE営業として配属されることが決まっている”ということを言っていた。”そもそも、塞翁君、今さら、何年も開発を担当してきた人 間に、勝てない。SE営業なら可能性ある”とも、アドバイスされた。居酒屋の風景が思い浮かんだものだ。
 そうこうしてるうち、火を噴きだしたプロジェクトがあり、私が、プログラマーとして投入される事になった。プロジェクトリーダーは、私より2歳程年下のおとなしそうな男だった。この男と、全く合わなかった。。。普段はおとなしいのだが、時にすぐに切れる人間だった。私なら(一見従順に見える)なんとかうまくやるだろうと上が投入したようだが、ダメだった。こちらから見ると、仕事の段取りが悪すぎる。システム設計もロクにできておらず、その煽りを受けるのは真っ平ごめんという気持ちだった。いつも早めにプログラムを作って、後は、時間つぶしをしている感 じの仕事生活となった。そのうち、何が理由か忘れたが、このリーダーと完全に対立、言い合いになった。仕事上で、この
ような人間関係に陥るのは初めてだった(その後もない)。前職が、奇跡的に恵まれた環境にあった事を思い知り、愕然となった。MさんやKさん、その他、仲良くなった中途採用の仲間達に、愚痴をこぼす毎日だった。仕事もプログラム開発ばかりで面白くない、このままここに居続けられるのか。。転職後直ぐであったが、大きな不安に襲われる毎日だった。。Kさんが、しきりにSE営業としての営業本部への配属を勧めてくれていたが、どうすれば良いかわからないまま、時間が過ぎた。
 そうこうしてるうちに、事業部人事課長に、入社後3カ月面談というものを受けた。 躊躇なく、現状の状況をうったえ、今のままでは、再転職の可能性が高い旨を訴えた。”私はプログラマーとしてここに入ったのではない”と暗に、営業本部への異動を示唆しながら。すると、人事課長は、かなり焦った様子で、私の真意を確認してきた。再度、念押しのダメ出しをした。こちらも、もう後がない気持ちだったので、前職時のように大人しくはしていられなかった。その回答を確認し、人事課長が、すぐさま、隣の部屋で上長と話しをし戻ってきた時に言ったのが、”何月とは言えないが、遅くとも、4月(その時、11月下旬)には、異動させる。”この言葉を聞いた時の嬉しさは、今だに忘れない。そしてこの出来事は、その後の転職人生に大きな影響を与えるものとなった。